歌鳥のブログ『Title-Back』

歌鳥の小説やら感想やらなにやらのブログです。よしなに。

未来医師

書けるうちにいろいろ書いておきます。えーと、これあまぞんさんへのリンクは自力でしなきゃいけないのかな。


 んー、なんかいろいろ面倒くさいな。

 未来医師/P・K・ディック

 だいぶ前に読んだ記憶があったのですが、中身ほとんど覚えていませんでした。たしか前回は、熱出して寝こんでいた時に読んだような。覚えてないってひどいな、俺。

 えー、さて。
 21世紀(この小説が書かれた時には遠い未来です)に暮らす医師パーソンズは、突如タイムスリップで25世紀へ飛ばされました。そこは生殖と死が厳密に管理され、平均寿命は15歳、医療行為が重罪となるディストピアな世界。そこで出会った集団から、パーソンズはある人物の治療を依頼され……。
 長いこと未訳だった作品だそうで。いざ読んでみると、なるほど、ディックにしてはあんまりパッとしない作品で、翻訳が後回しにされていた理由もわかります。
 とはいえ面白くないわけではなく。時間SFに特有の、因果律の逆行、原因が結果の後にくる現象の面白さは最高です。全てがきっちりとはまる感覚は、読んでいてゾクゾクします。
 まあ、ディックらしくはないです。
 ディック作品特有の、世界が足元から崩れていくような感覚は、この小説にはありません。かなり初期の作品らしいので、それも仕方ないのかもしれません。
 面白いのは(内容が、ではなく、興味深いという意味で)、話が進むにつれてスケールがどんどん小さくなっていくところ。

・個人的な事情(ここはどこ私は誰)
・社会背景(え、なにこの世界おかしい)
・遠未来(えーこんな遠くまで来ちゃって大丈夫?)→ここでスケールMAX
・とある氏族の事情(ああ、あんたたちが原因なのね)→スケール急激に縮小
アメリカ史に関わる事情(うわー歴史に関わっちゃったよ俺)→ちょっと盛り返す
・超個人的な事情(とりあえず生き延びなきゃ)→スケール最小
・家庭の事情

 という具合。序盤の世界規模のお話に比べて、クライマックスは家族問題にまで縮小しちゃいます。
 先ほどのディック感の問題とあわせて、このへんも人気のない理由かもしれません(解説でぼろくそ言われてます。いや解説者の人は褒めてますけど、世間的な評価で)。
 まあそれはともかく、面白い小説であることに変わりはありません。読んで損はないです。が、「ディックらしい小説」を求めるのでしたら、他の本を読む方がいいかも。