小説(ファンタジー)
飛行日和 「こんにちは」と、猫族の少年は言った。 「こんにちは」と、天使族の少女は言った。 白いワンピースを着た少女は、丘のうえに腰かけて、ぼんやりと空をながめていた。Tシャツに半ズボンの少年は、少女のとなりに腰をおろした。 「いい天気だね」…
過去作、のあとがきです。 ここだけ読んでもわけわかりませんので、どうぞ本編(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)からお読み下さい。 さて。 ずいぶん前に書いたお話です。いやー文章が若いな。 テキスト内に日付とか書いてないし、ファ…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 八 ひぐらし あれから毎年、夏になると、わたしはこの街をおとずれ、博物館に足をはこぶ。 杉の林を抜ける…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 七 さそお 「ねえ、みさき……」 最後の展示にさしかかったとき、かりんがうしろから声をかけてきた。 「なに…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 六 なまこ 今度のショーケースの中身は、釣り竿。解説文を読もうとしたとき、かりんがこう訊いてきた。 「…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 五 べんち 「ねえ、みさき。そんなに慌てないで。もっとゆっくり見ようよ」 うしろからかりんが声をかけて…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 四 れもん 脈絡のない展示物がつづく。欠けたお茶碗、時計、まねきねこ。 「ねえねえ、ほら、みさき姉ちゃ…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 三 かさ 「みさき姉ちゃん、はやくおいでってば」 奈子ちゃんがまた声をかけてくる。まじめに順路をたどる…
過去作です。読みづらいので分割して掲載しています。 最初から読む場合はこちら(http://blogs.yahoo.co.jp/songbird_i/36433215.html)へどうぞ。 二 たまごやき 受付には白髪のおじいさんがひとり。入場料を払ってチケットを受けとり、わたしは博物館に足…
“幻の景色”と書いて“かげのいろ”と読みます。読んでくださいお願いします。 過去作です。珍しく長いお話です。読みづらいので章ごとに掲載します。 一 ひぐらし はじめてこの博物館を訪れたときも、やっぱりせみがやかましく鳴いていた。 中学二年の夏休み。…
二人の騎士と二杯の酒 空家になったのは最近の事らしかった。窓も扉も破られてはいない。奥の部屋には寝台が二つ、居間には食卓と椅子が数脚。飾り気の無い殺風景な、だが落ち着いた感の室内。この数日に人の出入りした気配はない。微かに積もった床の埃に、…
動物園にて 顔つきだけ見れば、その動物は犬と猫のあいのこみたいに見える。大きさもちょうどそのくらい、大型の犬よりは小さく、大人の猫よりは大きい。肩から伸びる翼を広げると、ぼくの両腕を伸ばしたのとおなじくらいの長さになる。けど、彼が翼を広げた…
小麦粉と土と油の女王の話 あんた見かけない顔だな。旅人かい? ――そうか、だと思ったよ。 隣いいかな? 一杯おごらせてくれ。旅人には親切にしてやるのが、この国の流儀なんだよ。飯はどうだ? この店のパンはうまいぜ。豆のスープも絶品だ。 ああ、確かに…
見えるところにいて 「世界は、俺の見てる時にしか存在しないんだよ」 彼がいきなり、真顔でそんなことを言い出したから、わたしは「は?」と答えるしかなかった。 「俺の見てる時だけ、世界は存在するんだ。俺が見てない時には消えちまう。学校も、クラスの…
消しゴムの使い方 今でもはっきり覚えてる。彼女が僕に、この消しゴムをくれた時のこと。 「じゃーん! いいもの作りましたよ~!」 科学部の部室を尋ねた僕に、彼女は小さな装置を手渡した。見た目と大きさは普通の消しゴムと同じ。ただしケースの代わりに…
上と下 忍び笑いを漏らしつつ、ゼロはシックの背を見送った。爬虫人の相棒は、出口の手前でふと立ち止まり、ゼロのいる洞窟の奥をちらりと振りかえった。満月の逆光に照らし出されたその姿は、ゼロの目には異形の影絵として映った。その影絵も一瞬後には失せ…
リバーシブル あれをやるのは今しかない、とテツヤは決心した。数時間後にはじまる県大会の決勝。勝てば甲子園、負ければ高校生活のすべてが水の泡だ。 倉の南京錠を外し、なかに入る。暗くほこり臭い空気のなか、得体の知れないがらくたの山を通り抜け、奥…