歌鳥のブログ『Title-Back』

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ザ・ウォーカー

 CSで鑑賞。いやー面白かったです。が……。

 舞台は(おそらく)核戦争によって文明が荒廃した、いわゆる『マッドマックス』的近未来。
 一冊の本を携え、ひたすら歩き続ける主人公“ウォーカー”ことイーライは、とある街にたどり着きます。その街の支配者から「本を渡せ」と強要され……。
 原題は“The Book of Eli”で、歌鳥はこちらの方がずっとずっと好みです。この映画の本当の主役は“本”なので、そういう意味でも原題の方がいいと思います。まあ、配給会社さんにはいろいろ思惑があるのでしょう。
 えー、かなり本格的なSFでした。オチもSF的に納得のゆくもので、最後まで飽きずに堪能できました。
 あの“本”の正体は途中で見当がつきましたが、本当の正体は意外でした。白紙だと思ったんですよねー。読んでるふりだけしてるんだと。ちくしょう。すっかりやられました。
 スタイリッシュな映像も印象的で。特に銃撃戦のシーンとか。カメラワークが臨場感たっぷりで、その場にいるような雰囲気が味わえました。うちのちっこいテレビでも。
 ヒロインのお母さんがジェニファー・ビールスでびっくりでした。『フラッシュダンス』からもう30年か……。ゲイリー・オールドマン、こういうあくどくて嫌ぁ~な役が似合いますね。

 と、全体的にはとても楽しめました。名作のひとつだと思います。
 が。
 ひとつだけ、かなり個人的な理由で好きになれないところが……。というわけで、以下ネタバレにつき改行入れます。








 えーと、歌鳥はべつに無神論者というわけではありませんが。
 特定の宗教を信仰している人を糾弾したりはしません。が、「それしかない」という主張は嫌いです。そして「それしかない」という主張を教義に含んでしまっている宗教は、どうにも好きになれません。
 というわけで……。
 物語の中盤で、“本”が聖書であることが明かされます。
 この時点で私は「うへえ」と思ってしまいました。
 その後、どう考えても宗教的としか言えない描写が続きまして。たとえば主人公が弾くらっても死なないとか、主人公が神の声を聞いちゃってたりとか、その声に従っていればすべてがうまくいくとか……。
 この宗教色がなければなー。もっとこの映画を好きになれたのになー。
 とはいえ、宗教色を排除してしまうとお話にならないのも事実で。「この本が戦争の原因だとも言われた」とか「だから戦後、焚書の対象とされた」とか、そのへんは物語に不可欠で、かつ納得のいくものです。
「でももったいないから後世に残すべき」というのもうなずけますし、「だから西へ運んで、目的地で印刷してもらおう」という結末も納得できます。
 完全に、好みの問題です。私は好きになれなかった、なりきれなかった、ということで。
 願わくば、どこかに三蔵法師みたいな人がいて「この教典を届けに西へ向かうぞ」とか、似たような旅をしてくれますように。そして聖書だけじゃなく、他の宗教の教典も後世に残りますように。にんにきにきにき。
(あの「西へ向かう」という表現は、西遊記を意識していたりとかは……しないよね、きっと)