歌鳥のブログ『Title-Back』

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【音楽】Dead Man Walking / David Bowie

 またしばらく間が空いてしまいました。
 いろいろあって環境が変わったので、リハビリがてらになんか書きます。というか、これ書かないと先に進めないので……。
 恐ろしく長文ですのでご注意ください

 あの日は放心状態でした。
 ニュースを耳にしたのは夕方だったんですが、それから夜まで平静ではいられませんでした。普段ではありえないミスを連発して、猛烈な怒りを抑えられませんでした。「なんでだよ」と。
 世界でいちばん死んではいけない人なのに――とか思いました。
 しばらく沈黙していた時期は「ああ、さすがに歳だからな……」と諦めモードでした。が、最近になって2枚のアルバムをリリース。健在ぶりをアピールされて「おお、まだまだ行けるじゃん」と、下手な希望を抱いてしまったのでした。
 まさか最後の挨拶だったなんて、夢にも思いませんでした。

 私は80年代に青春(という立派なものではありませんが、一応そのへんの時期)を過ごしました。
 80年代といえば"Let's Dance"です。
 彼の最大のヒットとなった曲ですが……あの曲がヒットした当時は、それほどのインパクトは受けませんでした。
 いい曲だな、かっこいいなー、とは思いましたが、その程度で。「たくさんのヒット曲のなかの1曲」というだけの認識でした。
(この認識はいまでもあんまり変わりません。正直ボウイのファンにはあんまり人気ないですよね、この曲)
 が、この曲をきっかけとして、“デヴィッド・ボウイ”という名前が記憶に刻まれたのは確かです。
 その後、ラジオで特集を組まれていたのを聴きました。その番組で「トム少佐」や「ジギー」について知り、彼が幾度もの変貌を遂げてきたことを知りました。"Let's Dance"はその通過点に過ぎない、ということも。
 過去の名曲を耳にして、「これはもしかしてすごい人なのかもしれない」と思うようになりました。
 試しにベストアルバムを聴いてみて、その認識はますます確かなものになりました。"Ziggy Stardust"や"Heroes"はお気に入りの曲になりました。
 が、それでもやっぱり、当時は「たくさんのお気に入りミュージシャンのなかの1人」、という存在に過ぎませんでした。

 その認識を大きく変えられたのが、アルバム"Earthling"でした。


 まさかのドラムンベース
「変貌するアーティスト」という認識はあったものの、まさかここまでの変貌っぷりだとは。
 当時流行の最先端だったジャンル。しかもただ流行に乗るだけでなく、流行を飲み込み、咀嚼して、完全に自分のものとして吐き出す。
 最先端どころか、完全にその先へ到達してしまいました。このジャンルに詳しいわけではありませんが、「ドラムンベースの最高傑作」と言い切ってしまっても過言ではないと思います。
 度肝を抜かれました。夢中になってリピートしました。

 このアルバムでいちばん好きなのが、この曲です。



 この呪文の詠唱みたいなコーラスが大好きで。ブックレットにはこの部分の歌詞が載っていなくて、なに言ってるのか知りたくてたまりませんでした。
 最近になって、ようやく判明しました。ああ本当にいい時代になったなあ。


 まあ歌詞がわかったところで、意味はわからないんですが。この人の歌詞は難解で……。

 それはともかく。
 この曲、そしてアルバム"Earthling"をきっかけにして、この人に対する認識が大きく変わりました。ただのお気に入りではなく「偉大なアーティスト」となり、同時に私にとって「特別な存在」になりました。

 今に至るまで、その認識は変わりません。

 それ以来、新作をチェックし、過去作を漁り、最近ではネットでライブ映像を堪能しながら、現在に至ります。
 新作を2枚発表し、まだまだこれからの人だな……と思った矢先の訃報でした。
 その後のニュースで新作について知るたび、驚嘆せざるを得ませんでした。
 最後の最後に、自分の死まで作品にしてしまうとは。

 ビジュアル面でのインパクトが強すぎるせいか、そっち方面ばかりが強調されますけど。とっかかりがラジオとかCDとかなので、私としてはむしろ音楽面での印象が強いです。これほど偉大なメロディメイカーは、そうはいないと思います。
 そして――「デヴィッド・ボウイに影響を受けたミュージシャン」は星の数ほどいますが、「デヴィッド・ボウイみたいなアーティスト」は1人もいません。
 おそらく、今後も現れないでしょう。

 本当に、死んではいけない人だったと思います。
 胸にがっぽり穴が空いた気分です。

 よりによってこのタイトルかよ、という気もしますが。個人的にいちばんインパクトを受けた曲なので、この曲で追悼させていただきます。本当に、死んでてもいいからそのへん歩いててほしいなあ、歌ったりしないでいいから……とか思いつつ。