歌鳥のブログ『Title-Back』

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【意味がわかると怖い話】角の民族

    意味がわかると怖い話『角の民族』

 飛行機が墜落して3日。ジャングルをさまよったあげく、私はどうにか小さな集落にたどり着いた。
 住民は突然現れた私に驚いていた。だが敵意がないことを示すと、すぐに暖かく迎え入れてくれた。
 片言の現地語と身振り手振りを駆使して、我々はどうにか意思の疎通に成功した。私の苦境を知ると、皆は傷の手当をし、豪華な食事と酒で歓待してくれた。

  驚いたことに、この集落は周囲から完全に隔離されていて、外界との接触がまったくないようだった。住民たちは文明とは無縁の、原始的だが平和な生活を営んでいた。
 もうひとつ驚いたのは、住民たちに角が生えていたことだ。
 額の中央から、極彩色の角が1本。子供のそれは数センチほどの短いものだが、成人になると十数センチにまで成長し、人によっては枝分かれしているものもあった。
 彼らは村の中心にある湿地帯に案内してくれた。身振り手振りから察するに、ここは彼らの聖地らしい。
 曲がりくねった木々の根本に、極彩色の植物が生えている。触れてみるとブヨブヨと柔らかい。どうやらキノコの一種のようだ。
 懸命のコミュニケーションを続けるうちに、彼らの奇妙な風習が理解できた。
 村落で生まれた赤ん坊には、我々と同じように角がない。子供が1歳になると、村の聖職者によって額を小さく切開され、そこにキノコの欠片を埋めこまれる。子供が育つにつれてキノコも成長し、最後には立派な角となるわけだ。
 実に驚くべき風習だ。首に金輪をはめたり、唇に皿をはめたりする民族がいるが、それと似たようなものだろうか。
 そんな奇妙な風習を除けば、彼らは極めて平和的で穏やかな人々だった。誰もが優しい笑顔をたたえ、私の杯が空になるとすぐに酒を注いでくれた。
 果実が原材料らしい酒は思いのほか強烈で、やがて私は完全に酔ってしまった。明日には文明圏までたどり着く方法を考えなくてはならないが、今は眠くてたまらない。すべては後回しにして、今夜はとりあえず眠ってしまおう。

 

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 わたモテ語りはひとまず置いといて。久々の新作です。これにはちょっとした思い出がありまして。

 今年の正月にぶっ倒れた時、病院で3時間ほど待たされまして。「一旦帰ってもいい」とは言われたのですが、外は大雨だし歩くのも辛いし。おまけに携帯忘れちゃって暇も潰せないので、売店でノート買って待合スペースで一気に書いた……のが、この文章です。

 まあ書いた場所が特殊だったってだけで、ネタ自体は前々から考えてたやつですが。上に書いたことが特別ヒントってわけでもない……わけでもない、かな?

 いつもどおり解説とかはしない予定です。もっとヒントがほしい、という方はコメント欄なりツイッターなりでお知らせください。感想とかもお待ちしてます。