【わたモテ】ゆり編:どうでもいいけどよくない友人関係。
前回が昨年の7月って……どんだけ怠けてるんだ俺。
『わたモテ』語り、4回めはゆりちゃん編です。
例によって致命的なネタバレは避ける方向ですが、コミックスでまとめて読みたい方はご注意ください。またリンク先にはネタバレ含む場合があります。
で、今回はゆりちゃん話なので、主人公の呼び方は「智子」とします。まあ本名ですが。
フルネームは“田村 ゆり”。黒髪をお下げにしている、無口で地味な印象の女の子です。
手先が不器用で、人間関係も(智子ほどではありませんが)不器用。「どうでもいいけど」「私は~だけど」が口癖の、(智子ほどではないものの)人付き合いの悪いゆりちゃん。
そんな彼女が、どうやって(極度な人見知りの)智子と親友になったのか。
うっちーと同じく、きっかけは修学旅行でした。
修学旅行で智子率いるはみ出し者班に入ったゆりちゃん。が、それには事情がありました。親友の真子さんに約束を破られ、同じ班に入れなくなってしまったのです。
そんな事情で、当初のゆりちゃんは恐ろしく不機嫌。同室になった智子とも、もう1人のはみ出し者・ヤンキー娘の吉田さんとも、ろくに口をきこうとしませんでした。
が、旅行中に智子が吉田さんにちょっかいを出したため、2人の仲が険悪に。ゆりちゃんは嫌々ながら、2人の間を取り繕うハメになります。
(これもなにかの縁かも)と考えを変えたゆりちゃん。自由行動となった最終日には、わざわざ智子を探し出してまで同行。吉田さん、そして仲直りした真子さんと共に、4人での旅行を楽しみます。
旅行を終えてからも、ゆりちゃんは智子に積極的に声をかけ、一緒にお昼を食べるなど、時間を共に過ごすようになります。
そして迎えたバレンタインデー。放課後の調理室で一緒に作った友チョコを、ゆりちゃんは智子と交換します。
「友……達はするんでしょ、こういうの?」
智子にとって、高校で初めて友達ができた瞬間でした。
※その前に真子さんによる「友達になって」発言があるのですが、まあアレはお互いの勘違いによって追い込まれた末のアレなのでノーカンってことで。ゆりちゃんと違って、真子さんと智子は若干距離がありますし。
3年生でも同じクラスになった智子とゆりちゃん。その後も共に行動を続け、お互いの理解を深めてゆきます。
コミュ障の智子は、事あるごと(例えばファミレスで注文する時など)にゆりちゃんを頼るようになりました。
一方のゆりちゃんも、“気を使わずに側にいられる”友人として、智子との関係を大切にしています――智子に近づいてくる女の子に嫉妬するほどに。
えー、さて。
ファンの間でよく言われることですが、バレンタイン前後でゆりちゃんの性格が変わったように見えます。
修学旅行時のゆりちゃんは、表情豊かで口数も多く、周りの人にも気を使える女の子でした。まあ、ごく普通の優しい女の子です。
それが、2年の打ち上げ時になると――。
智子たち仲の良い友人以外とはほとんど関わろうとせず、下手すると智子以上のコミュ障に。時に傍若無人とも言えるような、空気を読めない振る舞いを見せます。表情もほとんど変えず、心の中で智子から(表情筋10gしかなさそう)と言われてしまうほどです。
これが作者さんによる計算の結果なのか、それとも数少ない(というか、今の所唯一の)作者さんのミスなのか。
それを判断する材料はありません。
作者さんのミスだとすると……恐らく、登場時のゆりちゃんでは“個性が乏しい”と思われたのでしょう。当時のゆりちゃんをひとことで表現すると「普通の子」「優しい子」くらいしか出てきませんから。
少々違和感は生じてしまいましたが、路線変更は当たりだと思います。普段が無表情な分、時折見せる笑顔がとてもかわいく見えますから。
一方、これが作者さんの計算だとすると……。
バレンタイン時、ゆりちゃんはモノローグで智子のことを
(無理して話さなくていいから楽)
と評しています。
もしかすると、ゆりちゃんはずっと無理していたのかもしれません。無理に話し、無理に笑っていたのかも。親友である真子さんと一緒の時にも、ずっと。
そして、智子と出会います。
コミュ障をこじらせ、周囲に気を使わず(というか使えず)、自分の醜い面も臆さずさらけ出す智子を見て、ゆりちゃんも無理をするのを止めた……のかもしれません。
智子の前ではオタク趣味を隠さなくなったネモと、まったく一緒の構図ですね。
もしくは……“遅れてきた中二病”という可能性もあります。
ゆりちゃんが“笑みを浮かべそうになって、慌てて隠す”という場面がいくつかあります。ゆりちゃんはある時点で「他人に表情を見られるのが恥ずかしい」という境地に達したのかもしれません。
可能性は低いと思いますが、まあ説明はつきますね。
入学時からの伏線を抱えていたネモとは異なり、ゆりちゃんにはこれといった大きなエピソードは存在しません。
反面、ほぼずーっと智子と一緒にいるゆりちゃんなので、細かい小さなエピソードが多数あります。
そんな中で、私が特に好きなエピソードがあります。喪136『モテないし漫画を薦める』の回です。
智子が珍しく「泣けた」「誰かに読ませたい」と感じた1冊の漫画。
旧友のゆうちゃんに貸したところ、やはり「泣いちゃった」との感想。真子さんも、さらにヤンキー吉田さんも、智子から借りた本に泣かされてしまいます。
そんな様子を見ていたゆりちゃん。帰り道、智子に「借りていい?」と尋ねます。それに対する智子の返答は「いいけど……」と微妙なもの。
帰宅して、さっそく漫画を読んでみたゆりちゃん。が、その感想は――
「ダメだ……何度読んでも涙が出ない」
友人たちと感想を共有できなかったことに、ゆりちゃんはショックを受けます。
親しい友人だと思っていたのに、同じ感情を分かち合えない。きっと誰ともわかり合えない……と、(表情には出しませんが)深く傷ついてしまったゆりちゃん。
そんなゆりちゃんに智子がかけたのは、意外なひとことでした――。
えー、さて。
主義としてネタバレはしないと決めている私です。故に、このお話のオチはここでは書きません。
が、めちゃめちゃ美しいお話ですので、ここでとあるブログへのリンクを貼っておきます。
……言いたいことを他のブログに丸投げする、珍しいタイプのブログです。
前述したようにネタバレ注意です。が、↑のブログは本編に匹敵するほど繊細な感想が語られてまして、わたモテ初心者の私には大変ありがたい存在でした。最近は更新を停止されているようですが、復活を心待ちにしております。
人様のことは言えませんが……閑話休題。
短いですが、心に残るエピソードです。
次回ご紹介するもうひとつのエピソードと共に、私がいちばん気に入っているお話です。
こういうのがあるからわたモテはやめられません。単なるギャグ漫画では片づけられない、奥深さのある作品だと思います。
そして、ここでもやっぱりゆりちゃんは表情を隠そうとしています(智子にはバレてますが)。
恐らくですが、上のほうに書いたゆりちゃんの変貌は、ネモとの対比によるものもあったのではないでしょうか。
見た目が派手で友人も多いネモ、不器用で人付き合いも苦手なゆりちゃん。
本音を隠して笑顔を見せるネモ、本音を隠して笑顔をごまかすゆりちゃん。
智子に対して何でも話せるネモ、「話さなくていいから楽」なゆりちゃん。
並べてみると見事に好対照です。
そんな2人が、智子を間に挟んで張りあったり、智子の不在に嘆きあったりした結果、最近では徐々に距離を縮めつつあります。このあたりの人間関係も見逃せないところです。
そしてゆりちゃん本人は、智子の“本妻”としての立場を確立しつつあるようです。
いろんな見方がありますが、私個人としては“ゆりもこ”のカップリングが一番安心して見られます。この関係は、きっと最後まで変わらないのではないでしょうか。受験という大きなイベントを控えてはいるものの……。
途中で余計な考察挟んじゃった結果、やっぱり長くなってしまいました。うーんこんなはずではなかったんだけどな。本当に語りたいことが多い漫画です。
次回は智子について。満を持して、というか今更、主人公について語ります。