歌鳥のブログ『Title-Back』

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【ここにいない由佳里】あけまして短編:お正月のリボン

   あけまして短編『お正月のリボン』

 たしか小1の冬だったと思う。舞のお兄さんが、私たちを近くの神社へ初詣に連れていってくれた。
 鳥居の手前で、お兄さんは友達を見つけて離れていった。舞はちょっと寂しそうだったけど、私は3人だけでお参りできることに、ちょっとワクワクしていた。
「お年玉たくさんもらえますように」
「絵が上手になりますように」
「いいことがいっぱいありますように」
 それぞれにお願いごとをした後、3人でおみくじを引いた。

 「やったぁ、あたし中吉だ!」
 他の2人が引くのを待たずに、由佳里はさっさとおみくじを開いていた。
「舞ちゃんは何? 何キチ? ファミキチ?」
「そんなのないって。それに吉じゃないかもしれないし」
「私も中。吉。中吉」
「やった、おそろい!」
 ハイタッチする舞と由佳里。
 私だけ凶だったらどうしよう、と心配だったけど、そんなことはなかった。私も中吉だった。
「あいちゃんも中! 3人おそろい! すごいね! すごくない?」
 由佳里がぴょんぴょん飛び跳ねて、今度は3人でハイタッチ。
「うん……すごい。びっくり」
 3人で同じ結果。大吉よりも、ずっと嬉しかった。
「中吉が3つ。ちゅうちゅうちゅう」
「ちゅう」
「ちゅうちゅう!」
 3人でちゅうちゅう言いながら、境内の真ん中に戻った。舞のお兄さんはまだ友達と話していて、しばらく帰ってきそうにない。
 由佳里は自分のおみくじをひらひらさせた。
「これ、この後どうするんだっけ? 食べるの?」
「ファミキチ」
「違う。たしか結ぶんだよ。ほら、あそこ」
 私は境内の隅を指さした。そこにはおみくじを結ぶ専用の場所がある。けど、おみくじはもう鈴なり。私たちの手の届く高さには、新たに結ぶスペースがなかった。
「これじゃ、結べないね」
「ん~、じゃ、こうしよう。舞ちゃん、じっとしてて」
「ん?」
 由佳里は舞の髪をちょっとつまんで、そこにおみくじを結んでしまった。
「舞ちゃん、超似合う! 超かわいい!」
「……」
 舞は手鏡で自分を見て、なにやら考えこんでいた。そして私を手招きすると、自分のおみくじを私の髪に結びつけた。
「これ、大丈夫? バチあたらない?」
 不安に思いながらも、私は2人に促されるまま、由佳里の髪におみくじを飾った。
「大丈夫だよ。だって吉だもん!」
「ちゅう」
 根拠もなくにっこりする由佳里、ネズミの鳴き真似をする舞。
 お兄さんが戻ってきて、私たちを見て大笑いした。それから鳥居の前に私たちを並ばせて、携帯で写真を撮ってくれた。
 ――お正月になると思い出して、あの時の写真を見かえしている。白いリボンの思い出。

 

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 もう2月に入ってしまいましたが、今年最初の更新でございます。

 毎年恒例の“あけまして短編”ですが……年末におっそろしく体調崩しまして、復帰に時間かかった結果、1月半ばまで手をつけられませんでした。というか、なんにもできませんでした。

 いやーびっくりしました。マジで死ぬかと思いました。

 そんなこんなで、どうにかこうにかネタ絞り出して書いたのがこのお話です。体ズタボロの割には、小学生のわやくちゃな雰囲気うまく出せたかなーと思います。

 

 えー、今更ですがあけましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いいたします。

 

 勢いでもうひとつ更新します。例のあっちの感想です。